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秋深し。秋色、藤むら、なつかしや。

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清水観音堂。外人が撮影していた

秋、深し。
まだ、そんな深くはないが、ゴロがいいので、秋深しだ。
月曜日、かねて気になっていた、上野の清水観音堂に、
俳人の秋色の句碑をみにでかけた。


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秋色の句碑と、桜の木

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秋色の浮世絵

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芭蕉、基角などと、秋色。千代女も描かれている、浮世絵


動物園も博物館も休みだが、人がまばらなので気持ちがいい。
例の中南米の楽団が、ブカブカやっている。
東照宮の門前で、デブの外人のおばさんに、青年が、
「将軍ノオーお墓、ウーン、サムライ、エーッと、」などと一生懸命説明している。
いい風景だ。
観音堂では、カメラを向ける外人の男性。
秋色、こと、お秋は、大坂屋という(のちに、大坂家)和菓子屋のかわいい娘だ。


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三田の大坂家


13才ながら、基角の弟子となり、俳句をたしなむ。
春。
このお堂の脇にみごとな桜の木があり、お秋は、美しさにみとれた。
上野の山は、花見客にあふれている。
心ない酔客が、桜を散らしはせぬか、お秋はちいさな胸を傷めた。
そこで一句。

井戸端の 桜あぶなし 酒の酔

これが、元禄の江戸で評判になった。

とかなんとか、そんなことをダラダラ書いたが、
じつは、ぼくは、和菓子の「きみしぐれ」が大好きで、あちこち探し歩き、このお秋の大坂家と、
本郷の藤むらにいきついたのだ。
いや、なまいきにいきついたなどと書いたが、ことのなりゆきで、この二軒を知ったにしかすぎないが。

でも、はっきりいうとぼくの舌では、味の選別は出来ない。
いまは、門前仲町の、老舗の岡満津のきみしぐれで満足している。
で、言いたいことは、菓子を食べるんでも「秋色」のようなドラマがあったら
楽しいんじゃないか、ということだ。
どこの、デパートでも手に入る、機械化された和菓子じゃあ、美味いかもしらんが、味けがなさすぎる。
秋色のロマンを大切に、かたくなに、家族で店を守りぬく、そんな姿がいじらしいぞ。

もうひとつの華は、本郷三丁目の和菓子の藤むらだ。
藤むらは、きみしぐれも美味いが、羊かんが有名だ。
「どうみても、一個の美術品」と、夏目漱石も「草枕」のなかで、絶賛している。
「我が輩は猫である」のなかで迷亭先生が、美味そうに食べる場面があるので、
漱石はよほど、この羊かんを気にいっていたのだろう。
森鴎外や与謝野晶子をはじめ多くの文人も通ったというから、本当に美味い味なのだろう。

その藤むらが、閉店してしまったのだ。
400年近い歴史を誇る由緒ある店なのに、オイオイどうしたんだよ。
16代目の昌弘社長にお目にかかった時、
「継ぎたくなかったんだけどね」と言っていた。
「でも、夢に祖父と父が出て来て、次男だが、お前が継げ、といわれ継がされた。」
などと、本気か冗談かわからないことを言っていた。
「一家、一業、余業を許さず。」とか、「小豆は、無駄使いすべし」とか、
宣伝するな、とかストイックな、家訓をずっと守り続けてきたらしい。
昌弘社長が、亡くなったと何年か前に聞いた。
それからもう、何回、そこへ出掛けても、店は閉まったまま。
「ああ、藤むらのきみしぐれが食べたい。」
正確には、「黄味時雨」、というのだそうだ。
時雨だよ。奥ゆかしいじゃん。
そういえば、大坂家では、「君しぐれ」。
これも、ロマンチックだなあ。
藤むらの黄味時雨、もうどうしても食べれないのかなあ。
平井の方で、もとの職人さんが藤むらの味を細々伝えている、という噂を聞いた。
伝統の味を消さないでくれ、と願いつつ、今日も、藤むらの閉じた玄関を
うらめし気に眺めながら通り過ぎた。


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藤むらのお菓子


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閉まった店

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