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神田神保町。さぼうるの灯と、赤色エレジー。

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神田神保町。
靖国通りをまっすぐ下ってくると、神保町の交差点あたり、右側にずらり古本屋が、並んでいる。
なぜ、右側にずらり? 
みな北向きに、ずらり。
友人に、疑問をぶつけると、
「当たり前だろう。本屋が、南向きだったら本が陽に焼けちゃうだろう。」

ハイ、愚問でした。
ぼくが、しばしば立ち寄るのは、写真やデザイン関係では、源喜堂。
どんな珍本、奇本でもどこで見つけてくるのか、早い。
もう一軒。
大屋書房。
古地図や古い文献、浮世絵など、ユニークで面白いものが、沢山。
みるだけで、おもろい店だ。
いま、古本祭りを、神保町でやっているが、
大屋書房では、杉田玄白の「解體新書」が手に入ったという。
1774年の発刊だというが、その時のものだったら、スゴイ。


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大屋書房


僕的にいうと、ここ神保町は、息子ふたりが、このあたりの小中学校に通った、思い出深い界隈なのだ。
しかも、すこし時間はずれるが、ここは、日大、中大、専大など多くの大学のひしめくエリアで
学園紛争のまっただなかで日本のカルチェ・ラタンとよばれる場所となった。
早大の闘争から端を発し、ほとんどの大学に飛び火してゆく、学生の反乱には、
ぼくも、カメラ片手に、各大学や、街頭を走り回ったものだった。
神保町の本屋の主人たちは、硬骨なひとが多く、
警官に追われた学生を、店にかくまう光景をしばしば目にした。
戦後体制への強い疑念という論点は、いまなお残るテーマではあるが、
しょせん、こいう闘争は、成算のない衝突の繰り返しで、権力に敵うわけもなかった。
学生を指揮した全学連委員長の唐牛健太郎は、
「60年安保は、壮大なゼロだった」と敗北を述懐し、
北海道という極北に漁師としての人生を求めて、そこで果てた。
そんな日本的敗北の美学が、多くの人々を感動させたものだった。


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すずらん通りの裏手にある、喫茶店「さぼうる」の、山小屋のような暗い店内で、
敗北と旨いコーヒーの味を、ぼくらも複雑な思いで味わった。
カメラマン仲間も、沈黙しがちだった。
いまでもときどき、「さぼうる」に立寄り、ぼくぼくした松の柱や、
桜のてすりを撫でながら時間の流れを愛おしむ。
コーヒー、400円。昔ながらのモーニング、サービス500円。

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古本屋街の狭い一角で、その頃、青林堂が、漫画のガロを出版し、
そのなかで、青春のはかない敗北をイメージした、林静一の「赤色エレジー」が共感をよんでいた。
みすぼらしい男と女のむなしいあけくれと、破局。
政治的時代と青春。
何とも、いえぬ、「赤色エレジー」という題だ。

それをテーマに、あがた森魚が作詞作曲した寒い叙情の、フォーク、ソングが心に滲みた。
曲は、
愛は愛とてなんになる〜、と始まるのだが、
ぼくに、奇妙にまつわりついてきたのは、
「お布団も ひとつ欲しいよね」
という、詩のくだりだった。
これは、なにかいいようのない、所帯じみたイメージで、リアリテイーがあった。
「神田川」も流行した頃だ。

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個人的なことだが、ウニタ書店の遠藤さんには、大変おせわになった。
左翼系の本や文献を扱う、ユニークな、書店の店主で、
「また、警察がきたよ。」などと、その筋からは、いつもマークされていた。
強い信念をもっているのだろう、剛胆な人だった。
しかし、ぼくとは、錦華小の記念誌や、映画を製作した仲間で、
式典にいらしった皇太子ご夫妻に対する、誠実な思いなど、意外な横顔に驚いた。
ウニタ書店は、いま、ない。

もう一軒、八木書店。
ぼくが、漱石関係の文献を収集するマニアで、欲しい本は大体ここで見つける。
この店が、一番揃っているように思う。
同時に、ここの奥さんは、小学校の記念誌の製作を手伝ってくれた、という因縁もある。
その後、若くして、彼女は亡くなったが、印象に深いひとだった。
漱石だったら、「虞美人草」と名ずけるかもしれない。

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八木書店

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