« ぐるっと、谷根千。バックトゥーザフューチャーに嵌まる。「谷中」その1。 | トップページ | ぐるっと、谷根千。谷中その3。 »

ぐるっと、谷根千。谷中その2。

01_p1100466

きょうは、富士山が見えるという、「富士見坂」を探しに行く。
日暮里駅、南口の墓地前で、いつも谷中の地理案内をしてもらう、
花売りのおじさんに、今日も聞いた。
ほんとに、見えるの?
「今日は、見えないよ」
いつでも、なんでも教えてくれる気さくなおじさんのご託宣だ、
やはり見えなかった。


02_p1100948
富士見坂


都内から、富士山を眺望できるポイントもだんだん少なくなったといわれる。
貴重な坂だ。
だが、富士は見えなくとも、富士見坂にむかう、細い道(諏訪台通り)は、
経王寺の長い塀沿いに、古風な三軒長屋など、戦前の懐かしい日本家屋
が散見され、懐かしさを感じる。
近所の奥さんが、
「長屋はお寺の貸し家ですよ。
若い人も借りてますけど、古い家が面白いんでしょうかね。」
このあたり、昭和好みの人には、必見の、通りだ。


03_p5141163
経王寺の塀

04_p1100898
古い長屋

坂のそばの諏訪神社に(信州、上諏訪神社と同じ、建御名方命を祀る)お参りし、
ついでに、すぐ隣の、道灌山公園に立ち寄った。
ここは、もう谷中じゃないが、昔から、景観の名所で、
緑に覆われた、涼風が心地よい高台だ。
「虫聴きの名所」という、由緒説明の立て札がある。
この、見晴らしのいい高台で、江戸時代から、花見、月見、雪見、など
四季折々の、風情を人々は賞でたのだという。
秋は、虫の鳴き声が美しく、鈴虫、馬追い虫、くつわ虫など、賑やかだ。
とくに松虫が多く、澄んだ音色が楽しめたそうである。
説明板に添えて、明治末頃の、虫聴きを楽しむ人々を描いた、
緒方月耕という画家の絵がある。
情感のある絵だ。


05_p1100941
道灌山、虫聴きの絵。


よくみると、主人公は、虫篭を持参して、篭の虫と、野の虫たちと唱和させようと、
しているのだろうか、風流だ。
それとも、その篭は、虫を捕まえて帰る魂胆かな、などと勘ぐった。
余計なことを考えて、隣の紳士に同意を求めたら、
「いや、虫篭じゃあないでしょう。
 蚊取り線香じゃあないの。」と、おっしゃる。
そうかなあ。
いずれにしても、芸がこまかい絵だね。
ここの木陰で、しばらくのんびりしたいな、と思ったが、
予定通り、三崎坂を散策することにする。

ユニークな、注文靴の靴屋さんがある。おばあちゃんたちが、ゾロゾロ。
「あ、ここ、この前、テレビでやってた靴屋さんだよ。」
「わたしも、観た、みた。」
ぼくも、みたよ。
SONOMITSU という店だ。


06_p1100374

若者の経営らしく、一階は、コーヒ、二階は靴屋さんで繋がっている。
ウリは、靴のフィッテイングの技術が、ユニークとかだったかな、
あいまいな情報で申し訳ないが、つぎにいく。

喫茶「乱歩」で、マスターから色々情報をもらう。
それと、名物のネコの良介の登場を待つが、16才のご老体だけあって、
気が向かないと、奥の自宅から、店の方へ、出勤されないようだ。
女性の店員さんが、「その日の体調次第で」という。
テーブルの上に、昔の電話帳のような、分厚い「楽我記帳」がある。
客の落書き、ネコのイラスト、
小劇団の公演の予告など、さまざまな、いたずら書き、雑情報満載で面白い。
店内は、ジャズに包まれた、懐かしい時代の匂いがして、ここちいい。
6~70年代には、こういう文化人の喫茶店主が、コーヒーの味と、誇りにこだわる経営をしていた。
店には、禁止事項がいくつか書いてある。
「店で、カップルがキスなどしたら、水をかけます」的なマナー警告だ。
若い女性など、それを読んでビビるむきもあるようだが、
要は、常識と、文化の感覚を持ち合わせていれば、咬みつくような店主ではない。


07_p1100394
喫茶「乱歩」

「乱歩」の正面近くに興味深い寺がある。
大円寺。
江戸時代、(1764~72)人気ものだった、お仙という女性の碑がある。
お仙は、鍵屋という水茶屋で働いていた、たいへん美人の女性で、

「向こう横町の、お稲荷さんへ、
 一銭あげて、ざっと拝んでお仙の茶屋へ………」

という、手まり唄に歌われたほど有名な女性だった。
浮世絵師の鈴木春信が、彼女を浮世絵に描いたことで有名になり、
お仙はスターになった。
お仙双六や、お仙手ぬぐい、などアイドルグッツまで売り出され、
茶屋は、お仙めあての客で大繁盛だったそうだ。
春信は、なかなか商売上手で、浮世絵を錦絵にし、桐の箱にいれ高価格で売ったそうだ。
それが参勤交代で、国に帰る武士たちの格好の江戸土産にもなったという。


08_p1110043
お仙の浮世絵


後日談がある。
ある日、お仙は、突如、姿を消した。
謎が謎を呼び、それも大変な話題になったが、
実は、幕府のお庭番(スパイ)と結婚したために、姿をくらましたので、
余生は、幸せだったという。
お仙の碑には、永井荷風が、碑文を書いている。


09_p5100910
春信とお仙の碑

江戸話のついでに、近くの「いせ辰」に寄る。
「いせ辰」(創業、1864年)は、手ずくり江戸千代紙を守る貫禄の老舗だ。
一枚の仕上げに、多いものは、何十という版木を使うらしい。
その精度には、なみなみならぬ技と熟練が必要であることは、いうまでもないだろう。
手ぬぐいや、水引などの小物も豊富だ。
繁盛店でありながら、素朴な古い店舗で、職人芸を守り頑張っている。

10_p5211336
いせ辰


先週、ヒマラヤ杉の風景を書いたが、この杉の2軒先に、
アラン・ウエストさんのアトリエ兼、店舗がある。
かれは、アメリカ人でありながら、
屏風画など、日本の古典絵画の製作をしているベテランの絵師だ。

先日は、アトリエに立ち寄ったら、留守だった。
今日は、いた。
1982年来日、美大の大学院で、日本画を学んだ。
そして、金箔、銀箔を駆使した、豪華絢爛たる琳派の伝統や、狩野派の筆法を受け継ぎつつ、
現代的かつ独創的な、センスで、自然を描いている。

12_p1100651

ぼくが、個人的にかれをスゴイと思うのは、
絵だけでなく、
このヒマラヤ杉の立地を住まいに選んだことだ。
めがいい!。


あとは、経済的幸運を祈りたい。
ぼくは、貧乏人だから買えないが、
今日も、ご婦人のお客が、
作品をご購入くださりそうだ。

ぼくは帰ろう。
「アランさん、じゃあまたネ」
かれは、ご婦人と、作品談義に夢中で、
こっちどころではない。


11_p1110136
アラン・ウエストさん


谷中の墓地を通って、人気の洋菓子店に寄る。
アレ?
鳩山首相のおじいさんの、お墓の前に、パトカーがいるじゃん。
どうしたの?
離れたところに、太ったやさしそうなお巡りさんが立っていた。
ああ、あの事件かア。

「ペンキかけられたんだってね」
「ウン、しかも、墓標にね」
「どんな色の?」
「黄色だよ」
「墓地や、区で、きれいにしたの?」
「いや、家族が、すぐ奇麗にしたよ」
「ほう!いや、まったく、ごくろうさん」

いや、お巡りさんもだよ。

12_p5271372


その、墓地の裏手。
上野桜木町2、「パティシエ・イナムラ・ショウゾウ」で、洋菓子を買う。
K子ちゃんはじめ、あらゆる人から、
「あそこの行列は凄いよ」とおどされてきた。
あんまり大勢、並んでいたら、そのまま買わずに帰るぞ、と自分に言い聞かせながら、出かけた。
思わざる小雨がチラツイタせいか、客は、若いカップル二人だけ。
モンブランにチョコレートケーキという、平凡な選択で買い求め、帰宅してたべた。
さすが、おいしかった。


13_p5271452


|

« ぐるっと、谷根千。バックトゥーザフューチャーに嵌まる。「谷中」その1。 | トップページ | ぐるっと、谷根千。谷中その3。 »

僕的、都市ウオーク&おいしい。」カテゴリの記事

写真」カテゴリの記事

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1150352/34950332

この記事へのトラックバック一覧です: ぐるっと、谷根千。谷中その2。:

« ぐるっと、谷根千。バックトゥーザフューチャーに嵌まる。「谷中」その1。 | トップページ | ぐるっと、谷根千。谷中その3。 »