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スカイツリーで、飲めるぞ、酒が飲めるぞオ。業平橋。

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街の中にズボリと

都バスで「業平橋」に近ずくと、右手の窓側に建設中の
スカイツリーが現れた。
いきなり、町の真ん中にズボリと巨塔が、打ち込まれた印象に驚く。
現場近くに寄れば、かなりな空間の中に建設中であることがわかるのだが。
人々は、みな自然に、タワーにカメラを向ける。
催眠にかかるように、空を仰ぎ、レンズを向けたくなる。
今はまだ、単なる工事現場でしかないのだが、
野球場や、劇場などに向かうわくわく感みたいな、軽い興奮を覚える。

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撮る、撮る撮る


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突如、面白い連想が浮かんだ。
酒がのめる、酒が飲める、酒が飲めるぞオ。
という、あの唄だ。
人は、なにかに、かこつけて、飲む。
そういっちゃあ悪いけど、ここは、いまはなんの変哲もない街にみえる。
しかし、タワー建設という、音頭取りで、町が元気なのだ。
気のせいか、案内所の、おねえさんも、町をゆく人々も浮き浮きしている。
ニュータワーで、酒が飲めるぞオ、ってな感じだ。
がぜん、ぼくもノリノリ気分になる。

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案内所の、タワーの模型

なぜか人力車が、二台いる。
工事のおじさんに、聞いた。
人力車で、どこへ連れてこうってぇの?
「ここで、田舎のお爺さん、おばあさんを捉まえて、浅草へ連れてくのォ」
へーェ?
浅草近いからね。
浅草案内という、営業の手もあるんだあ。


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二台の人力車

だいたい、この業平橋って、あの在原の業平に関係ないのかなあ?
業平橋(という橋がある)をくだって、川を埋め立てた公園で、
ジンベイ姿のおじさんに聞いてみた。
業平がいたのかなあ?

「そうなんだよ。
 在原の業平が、このあたりに住んでたの。
 なんとか都鳥、なんとか忘れるな、って短歌、あるでしょう!」

へぇ、おじさん、よく知ってるねェ。
在原業平っていえば、平安時代の歌人。
古今和歌集で有名だ。教科書にも載っている。
そして美女、小野の小町に対する美男の代表格だといわれる。

名にし負はば いざこと問わん都鳥 わが思う人は ありやなしや

都鳥よ、都という名がお前にふさわしければ、おまえに訊ねたい。
私の恋しい人は、無事でいるのか、どうだろうか。
平安期の隅田川を越えた、寂しい、ここで詠んだのだろう。
橋もない時代、ここは、すすきの生い茂るような場所だったに違いない。
いまも、人をめがけて飛んでくる、ゆりかもめ(都鳥)が、隅田川の風景だが、
それを眺め、鳥に語りかける心細いかれの心中は、いかに、だ。
現代の、冴えない業平橋の上に立って、昔を偲ぼうとするがイメージが湧かないなあ。
いざ言、問わん。は、のちに、隅田川にかかる、言問橋の名になった。


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業平橋の下にいた、おじさん

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業平橋、橋上


そう言やあ、落語の古今亭志ん生の、住んだ「なめくじ長屋」が、
このあたりにあったというじゃないか。
もう、当たるを幸い、じゃあないけど、通行人を捉まえて、その場所を聞く。
みんな知らない。
「志ん生?、なめくじ長屋?、知らねえなあ。」

やっと、それらしき跡地を見つけた。

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なめくじ長屋の跡付近


志ん生の住んだのは、昭和初期のことだった。
なにせ極貧に喘ぐ、志ん生が「タダで住めるよ」、と聞いて住んだ場所だが、
さすが、もう当時の面影はなにもない。
業平の湿地帯を埋め立てて建てた、8軒の長屋だったらしい。
志ん生が、当時の生活をしゃべったり、書いたりしたその当時の風景だから、
多少は誇張もあるだろうが、ひどい所だったようだ。
じめじめした湿地帯で、蚊やなめくじが一杯で、誰も入居する人がいない。
困り果てた大家が、タダでいいから住んでくれ、という話だったようだ。
なにせ、人の気配は志ん生宅、一軒だけだから夜になると、
灯りをめがけて蚊の大群が、ワット押し寄せる。

「いま、けえったよ」って、口あけると、そこへ蚊が、飛び込んでくる。
部屋の中だって、蚊帳つっても、あちこち破れてて、つぎはぎだらけだ。
その穴めがけて蚊は、出入り自由だった。
なめくじの大群も、壁を這い、デカイ奴は、10センチもあって、塩をかけても、
錐でブスリと刺しても平気だったという。
ああ、あ。

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志ん生(下)ポスター。谷中で


表通りの浅草通りに出る。
酒が飲めるぞ、じゃあないが、賑やかなお祭り騒ぎの好きだった、
「四世鶴屋南北」の眠る、
春慶寺が、スカイツリーの目の前にある。


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春慶寺。鶴屋南北の墓


鶴屋南北は、「東海道四谷怪談」の作者だ。
独創的で、破天荒な作家だった。
芝居のアイデアだが、殺人現場で、結婚式をあげるなど、
かなり、えぐい発想が好きだった。
四谷怪談の魔力的構想をみよ、だ。
生前に、自分の葬儀のシナリオも書いた。

めでたい万才(まんざい)の、はしゃいだ仕立てで葬式をやれ。
オレの棺をかついで、練り歩け、など、
自身を風刺化し、最後まで、狂言役者の精神を貫いた。
すげえなあ。
門前仲町の黒船稲荷に住んでいたが、そこで死んだ。


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黒船橋上。右手の森に南北の住まい

そこから、春慶寺まで裃をつけた役者衆の長い葬列が続いたという。
エロチシズム、スプラッタ、グロテスクが持ち味の、この不世出の作家に
肩を並べる現代のアーチストは、誰だろうか。

なんと、この鶴屋南北の眠る寺の一角で、
あの、王貞治さんが、少年時代を過ごした、という。
縁は異なもんだ。
その王さんの足跡をたどりつつ、次回は、吾妻橋、向島を散策する。

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南北の住居、黒船神社

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寿司屋の店頭にも模型が

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