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〜漱石ハートにナビゲート1〜千駄木、薮下の道。

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世間は、領土問題などでキナ臭い。
大国の覇権主義?
それにTPPの黒船か。
新しい価値観を探す、時代のはざまなのか。
いま、日本は明治初頭の混沌に逆戻りするのだろうか?
夏目漱石!おしえてくれ!
オレたち、これからどう生きたらいいんだよオ!

なぜか、漱石の去った跡を辿ってみたくなった。
辿った先になにが見えるのか、見えないのかわからないが、
さあ出かけてみることにする。


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団子坂


薮下の道という緑深い道がある。かれの千駄木の自宅からそう遠くない距離だ。
道は千駄木の団子坂上から、根津権現の裏門の方角に伸びた崖すれすれの長い細い道である。
左手の遠景には、根津や谷中が望まれる地形だ。
竹やぶの生い茂ったスゴいとろだったらしい。
薮そばの元祖らしきそばやは、この崖下で商っていたという。

地下鉄千駄木駅を降り、団子坂上に来た。
はて、どこをどう曲がればいいのだろう。
ビルらしき工事中の、隣りでガードマンと立ち話中の年配の女性に尋ねた。

ー漱石の住居跡は、どの辺でしようか?
「漱石?鴎外じゃあないの?
 鴎外だったらウチの隣、観潮楼。ほら、工事中だけど、」
「来年の2月完成だよお」

横から、おじさんのガードマンが、注をいれてくれた。

ーホウ!。だけどきょうの行き先は漱石なんですよ。
それにしても、奥さん家は鴎外の屋敷のお隣なの?
すげえ。

ーきょうは、漱石の旧居跡と薮下の道を教えてください。
「はい。薮下通りはそこ。漱石の家は、団子坂を直進して3本目の道を左折ネ。」
江戸っ子だった、歯切れがいい。
ー昔、菊人形の店が並んだのは、このあたりだったの?
「そう、ここから坂下にむかってびっしりと。」


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菊人形の店のジオラマ

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鴎外邸の隣家の小倉さん

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薮下の道

「三四郎」の登場人物、美穪子と三四郎はこの団子坂の菊人形を観にきて、
あまりの雑踏に美穪子が気分が悪くなった。
(この脇の薮下の小道でひと休みすればいいのに)ふたりは団子坂をくだり、
藍染川に添い根津の方角にくだっていく。

まあそんな、漱石の筋書きは別として、ぼくは薮下の道を歩くことにしよう。
それにしても、緑が茂り、左手が崖下になっているので、のびやかな気分になる。
漱石先生もこのあたり気持ちよく散歩されたことでしよう。
崖下にむけて、小便されたかもしれませんね。

半藤一利さんは、「歴史探偵かんじん帳」毎日新聞社刊のなかで、
長谷川如是閑氏がはじめて漱石に会ったときのことを紹介している。
如是閑氏はいう。

「…まもなく二人で何処か見物に歩くことになって外へ出ると、
 夏目君は突然往来の反対側に立って小便をした。
 その側には家並はなくて、崖になっていて、崖の下は植木畠で
 その向こうに田んぼを見晴らしている。
 君は小便をしながらなんとかその風景のことをいっていた。」


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崖下、薮そばがあった

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崖下は、モダンな風景に変わった

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薮下の道の風景

まあ小便の詮索はほどほどにして、いまは崖下はすっかり民家や、学校などの風景に変っている。
漱石が千駄木57番地に居を定めたのは、英国留学から帰国後も
かの国の圧倒的文化や、不愉快な威信の誇示、
日本や自分のゆくべき道の混迷に打ちのめされ、ノイローゼ状態の頃であった。
加えて、後に書きあげる「道草」の中に登場するもと養父とおぼしき人物につきまとわれ、
不快は、相当に嵩じていた。
顔も忘れかけたその男に久しぶりに出会うのは、薮下の道の終わる「根津権現の裏の坂で」だった。
最初は互いに無言で行き過ぎるのだが、漱石の胸には怯えがはしる。
漱石は、自己確立の模索や、生活周辺の不安に悩まされながら、
生きてゆくのである。

東京駅から、湾岸の自宅に帰るバスに乗った。
窓の外は、
尖閣問題の映像流失を巡る抗議デモが行き過ぎる。
今日は、11月6日だ。
漱石の悩んだ時代にダブルかのように混迷が深まる。
斉藤孝氏は、「夏目漱石とはなにか、」という定義を巧みにまとめている。
漱石とは「日本人の基本的な悩みをすべて考えてくれた人」である、という。
こんな時代だからこそ漱石が懐かしい。
次回は、猫の家を尋ねる。

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薮下の道、根津権現近く

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根津権現裏の坂。脅えた男とすれ違う

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権現様付近の家並

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