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乱歩、鈴懸けの道、明日館

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藤田新策、絵。江戸川乱歩、KAWADE ムック。


2月に入った寒い日。
地下鉄有楽町線の池袋駅の改札口を出て、しばらく西に向かうと、
街路樹のふしぎな配列が妙に非日常に誘い込むような道がある。
一角に、

 うつし世は  ゆめ
 よるの夢こそ  まこと

という、乱歩の言葉の刻まれた碑がある。
更にゆくと、怪人二十面相らしき館を発見した。

なんと、鉄の扉が開いている。
あたりを窺いながらそろりと邸内に入る。
あたまのなかは、すでに少年探偵団の小林少年になっている。
「ムムッ」
天井の高そうな洋館がある。


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フシギな並木道


そっと、そこを覗くと、二十面相の趣味なのだろうか青いソファが、
いままでそこに彼が座っていたかのような気配を感じさせる。
異様な眼鏡が、あって、思わずうしろをふりかえる。
誰もいない。
その館をぬけて、裏の庭をそろりそろりと進むと、
やや!!
二十面相が、盗み取った財宝を隠匿したのではないかと、
推測される黒い倉があるではないか。
土蔵の陰を覗く。

宙を歩く  白衣夫人や  冬の月      乱歩

重く沈黙した、この秘密めいた建物になにが秘められているのか?

「20万冊の資料が、そこに入っています」
うしろから突然、声をかけられた。
スリムな女性が、書類を抱えそこに立っていた。

ちょっと、ふざけた筋書きにしてしまったが、大体、そんな感じで、
入り込んだ江戸川乱歩邸は、
今は立教大学江戸川乱歩記念の「大衆文化研究センター」として公開され、
彼女はその研究員の方のようだった。
来訪者はぼくひとり。
人の気配のない屋敷に入り込んだために、彼女の後ろからの出現には、
ドキリとさせられた。


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乱歩邸

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乱歩邸、応接間

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メガネのかずかず

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フシギな蔵があった

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乱歩、収集品など


次に進もう。
若者には馴染みがないだろうが、こういう青春ソングがある。

友と語らん
鈴懸けの径(すずかけのみち)
通い慣れたる まなびやの径
やさしの 小鈴 木陰に鳴れば
夢は帰るよ 鈴懸けの径       
(灰田晴彦 詞、曲 灰田勝彦 歌)

立教大学の構内にきれいに並んだ鈴懸けの並木道がある。
いまは、枯葉の散る寂しさだが、学生たちが急ぎ足でこの長い並木道を行き来する。
歌のモデルは立教に学んだ勝彦の散歩したこの並木道だ。
ぼくの次男もここに学んだ。
わが子の学生時代の日々は、親の目からは空白の時間である。
ふと、学生の群れの中に、過去の記憶が混じり、次男の姿を追ったりする。

この歌には面白いエピソードがある。
ハワイに渡った灰田一家だったが、父を亡くし納骨のために灰田兄弟は来日した。
そして、再びハワイに戻ろうとしていた。
その帰国前夜、ふたりは泥棒にパスポートをはじめ、すべて盗まれてしまった。
やむなく、日本に腰を据えることになった兄弟がハワイアンバンドを組み
この曲を兄がつくり、弟が歌い、ヒットさせた。
まさに不運が一転、幸運を産んだという話だ。
鈴懸けの歌碑が並木道の傍らにある。
美しいメロデイが、音もなく耳に流れてくる。

やさしの小鈴   木陰に鳴れば
夢は帰るよ   鈴懸けの径

兄弟はすでに亡い。


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鈴懸けの道

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立教大学あたり

そこから20分ほど歩くと、自由学園の「明日館」(みょうにちかん)がある。
教育の理想をめざした羽仁もと子、吉一さん夫婦のいろいろなご苦労をここで偲ぶことができる。
建築はフランク・ロイド・ライトの設計で、アールデコのデザインが楽しい。
孫の羽仁進さんが少年時代、自由学園の登校前、雑木林の道で
蟻が列をなして林の中に消えて行くのを追って、いつも遅刻した。
しかし、その好奇心を大切にさせるため、先生はいつも遅刻を咎めなかったという。
ぼくは、進さんに取材でその話を聞き感動、幼児だった長男に、
衝動的に自由学園の通信教育を学ばせたことがあった。
まったく、粗忽な教育パパだった若気に、いまでも恥じ入ることだらけだ。
しかし、1921年学園創立時、
「みずからを、教育しようとする、少年少女よ来れ」と、もと子さん達のよびかけた、
鮮烈な革新性には、いまだにぼくはしびれている。


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自由学園、明日館

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明日館

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明日館傍の、ティールーム、シャトレ

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