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これでいのだ。青梅に赤塚不二夫会館があっても。

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青梅の赤塚会館

TVコマーシャルには、何度繰り返してみても、思わず笑ってしまう作品がある。
好きな、まつけんの起用だったが、赤塚不二夫の「レレレのおじさん」を使ったCMは、
残念ながら、ぼくにはハズレだった。

赤塚マンガのなかでも、リアルなキャラとは、ぼくにとっては、まずレレレのおじさんだった。
故郷に、それズバリのおじさんがいたからだ。
レレレのみならず、昭和という時代には、キャラ立ちしたおじさんが、
町や村にたくさんいて、笑わせたり、悩ませたり、うんざりさせられたり、大変だったのだ。

都市の町はずれの、川べりのぼくの家の、そばには、10軒ほど連なった、長屋があった。
そこの一軒には、「ばくろう」とよばれた、牛馬の売買をするおじさんがいた。
日焼けしたいかつい顔だったが、やさしい人だった。
「おでかけですか、レレレのレーッ!!」だ。
おじさんは、頭にはちまきをし、酒の一升瓶をぶらさげ、抜けた歯を、
むき出しにしていつも楽しそうに笑っていた。
近隣の農家から依頼された馬を曳いて、1年近く東北の方に売りに歩くという生活だった。
時には、出たきリ3~4年も戻らないこともあった。
おじさんの家庭は、三人の女性が、次々におじさんに連れらて来て、また去り、
その母の違う子供達とぼくは、よく遊んだ。
おじさんは、ある日、馬を曳いて出かけたきり、戻らなかった。

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レレレのおじさん

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ばくろうおじさんの長屋があった

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レレレの像


赤塚不二夫のことから、つい自分の体験に話が脱線してしまった。
きょうは、青梅の赤塚不二夫会館にきたのだが、
ぼくは、1回だけ、赤塚を取材したことがあった。
なにせ、はっきり覚えていないが、三角地のようなところに建てられた
2~3階建ての赤塚の家で、屋形舟のような感じの広い畳部屋での取材だった。
雑誌社からの、いってこいの取材だったし、その頃は赤塚まんがに興味もなかったので、
ライターに、取材を任せ、写真だけを撮っていた。
最初の名刺交換で、ぼくのちいさな活字の名刺をみて、
赤塚は、「あんた、こんな字がちっちゃいと、キャバレーじゃ、読めないよ」
といって、ばかデカイ字で印刷した自分の名刺を渡し、
「ホレ、これと同じにしなよ。暗くてもはっきりわかるからサ」
といった。
思わず、みんなが吹きだした。


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会館には、こんなコーナーもあるのだ

ぼくの次男は、小、中学生の間、赤塚まんがに没入していた。
電話帳のように厚い「赤塚不二夫1000ページ」は、読み込んでボロボロになっていた。
そんなに、面白いのか?
ぼくも、デイック・フランシスに溺れて全巻繰り返し読んでいたから、
かれの心理はわからなくもない。
いまにして思えば、この赤塚の神髄を先取りしていた次男がうらやましい。
あの時、赤塚に惚れ込んでいたら、
たしか、取材の時、猫がいたから、
赤塚と菊千代(猫)との劇的なやり取りも、興味深く、観察できたかもしれない。
妻の真知子が撮った赤塚と猫の映像が残っているらしい。

赤塚が、菊千代(猫)に話かけている。
「お前が死んだらね、凄く可愛いアメリカン・ショートヘアを飼うの。
 だから、早く死にな」
とたんに菊千代は、赤塚に噛みつく。
「なに、ここにいたいの?じゃ、可愛いワンちゃん飼うよ。ワンちゃん」
菊千代は怒って、赤塚をひっかいて逃げてしまう。
赤塚は、動物と話ができるのだ。
(武居俊樹 著。赤塚不二夫のことを書いたのだ!!!文芸春秋刊)


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菊千代の像もあるのだ


赤塚の対談集も面白い。
特に女性に浴びせるセクハラじみた語りは秀逸だ。
女性が、それを怒りもせず許容するのは、赤塚によほどな魅力があるからだろう。
赤塚は、満州育ちで、戦後辛酸をなめた。
赤貧、肉親の死、泥棒、いたずら、という尋常な人生ではなかった。
鳩の糞を三歳の、ジョンジョンに食べさせた。
「味はどうや」
「にがい」
デカイ野良猫を罠でつかまえた。
縄でぐるぐる巻にして、石をくくりつけて池に投げ込んだ。
2~3日後、野良猫は、ケロっとした顔で、野原を走り回っていた。
その後ジョンジョンは、「おそ松くん」のチビ太となり、不死身の野良猫は、「もうれつア太郎」
のニャロメとなって赤塚まんがに登場し、バカ道を突き進んだ。
どんな酷い目にあっても、へこたれず、ずるがしこく、みんなしぶとく生きる。
赤塚自身のこんな馬鹿話もある。
裸で尻にろうそくを挟み、雪の中を這って廻った、という。
こういう究極の馬鹿っ話には、
笑いころげながらも、吐く言葉はみあたらない。

「ただ馬鹿っったって、本当の馬鹿じゃなきゃあ駄目なんだからな。
 立派な馬鹿になるのは大変なんだ」

プレイボーイの「人生相談」で、赤塚は、若者達にそう言っている。(武居俊樹)

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トキワ荘、台所で入浴。ジオラマ山本高樹、作

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会館、館内

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