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佃の沈みかかった舟。

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K君、その後、どんな調子ですか。
若いK君の、ひきこもりを心配しつつ、ふと、振り返れば、
ボクも東日本大震災のあと、心身ともに変調をきたして腑抜けのようになっていた。
まず、ものごとに執着する気持ちが薄れた。

病院に出かけたら、A 1c もクレアチニンも滅茶苦茶な数値ですよ。

「からだ、どうすんですか」

と、医者にも、文句言われた。
なんか、深刻なありさまのようだが、
人ごとのような出来事に思える。
家にゴロゴロしている。

奥で、かみさんがなんか言っている。
ボクはこう答える。

「なんにも欲しくないよ」
「任せるよ」
「動きたくない」

この2カ月、反応は、この3つのパターンになった。
からだが、自立性をなくした。
腹痛や下痢が襲う。
K君に、えらそうな顔をしていたかもしれぬが、いま、自分が自分の統治能力を失しなっている。
欲しいもの、見たいもの、やりたいこと。
すべてが薄いヴェールの向こうに、かげろうのように遠い。

まずいぞ。

なにか
ひとつひとつ、執着できるものを、瓦礫のなかから掘り起こさなければネ。
いまやっとこ立っているのに、チョッピリ風でも受けたら、ボロボロに崩れそうだ。

ふと、考えた。
記憶喪失者のことである。
突如、記憶を失った男は、自分はなにものか、どんな欲望や、目的をもっていたのか
懸命に探そうとするだろう。
そんな迷子の状態に自分も陥ったように思えてきた。

うーん。
これが、空虚っていうやつか。
ヤバイぞ。
すこし動いてみよう。
とりあえず、あてもないがバスに乗ってみた。
そのとき、

「そうだ、佃にいってみう」

と、ピピっとひらめいた。

ぼくの生家は、いま話題の浜岡原発から30キロ程先にあるちいさな町の小川のほとりにある。
少年時代、その川を上って田畑の耕作に急ぐ、「べか舟」の人の姿をよくみかけたものだ。
川べりには、佃の堀のべか舟のように、沈みかかった舟がいく艘か見受けられた。
ぽっかりと空洞化した気分には、
こういう時を超えたた風景は、瓦解した気持ちに馴染むものだ。

佃で、ゆったりと午後の時間が流れた。
べか舟のみならず、
芝居の書き割りのような、この町のたたずまいにボクは吸い込まれていた。

そして、
この潤沢な癒しの時間を費やして、すこしボクは元気を取り戻したみたいに思えた。


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コメント

昨日、病院に行って「先生に言われたとおり、食物繊維を毎日とるようにしています」と言ったら、「ありがとうございます」と答えてくれた。「ありがとうございます」???。冗談じゃない! 自分のためにしたことだ、医者に礼を言われる筋合いはない。と、一瞬思ったけど、よく考えたら、自分の診断を信頼して実行してくれて「ありがとうございます」という意味なんだな、とひとりで納得した。

…震災後、募金やボランティアなど、どんなことで日本の社会の一員として関われるのか、ずっと考えていた。
無責任なことはできない。。

その結果、なんとなく答えとして導きでてきたものは、結局「しっかり生きる」ということだった。
それは震災前も後も関係ない。
自分の為に、「しっかり生きていく」ことが、社会の一員としての使命なんだ、と。

フェイスブックで宮城の友達と連絡がとれて、「ゼロからのスタートだけど、前向きに頑張っています」と返事が来た。
今は彼のためにできることはないけど、しっかり生きていれば、この先関わっていくことがあるかもしれない。

まずは自分の為にしっかり生きていくこと。
それが、明日には「人のために」に、つながっていくかもしれない、と思いました。

投稿: Masaki | 2011年5月15日 (日) 19時27分

ご意見、その通りだと思う。
ぼくの場合は、もうひとつ公表できない災害があってね。
いま、ニーチェで、救済されている感じ。
ご意見ありがとうね。

投稿: げんごろう | 2011年5月15日 (日) 21時29分

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