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駄菓子屋の奥でピアノのの音、火の鳥が飛んだ。鬼子母神界隈。

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鬼子母神、入り口


 森閑とした、深緑の神社の境内。
8月も半ばだというのに、蝉の声がない。
今年はどうなっちゃたの。
この静けさ。
奇麗に菓子の並べられた駄菓子屋の奥の方から、
ピアノの音がこぼれたりするらしい。
鬼子母神堂の境内、である。
黙って店の前に立つと、奥からすっと年配の女性が顔を出した。
「ピアノ弾くんですか」
唐突な質問に、彼女は、当惑しながら、はにかんで、
「ええ、まあ」とあいまいに微笑んだ。
話しを切り替えて、
「えーと、駄菓子買おう。
これと、これと……」
駄菓子をあちこちからつまみだすと、
サッと、ちいさな篭がさしだされ、
「あ、酢蛸ですね、暑いと口が締まっていいですよ。
その乾燥菓子は、すこし甘いですよ。」
ボクがつまみあげるたびに商品説明が加わる。
5~6品種つまみ終わると、
「ハイ、322円ですネ。」計算が早い。
「ア、400円で、お釣いいです」と、ボク。
「すみませんね。じゃあ、これ、おまけ。」

駄菓子屋のおばさんとのハイテンポなやりとりに、子供時代の記憶が、
さっと、蘇ってきた。


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駄菓子屋


残ったコインを握りしめていると、
「ハイ」と、亡き母が小銭を渡すしぐさがふっと浮かんだりする。
同時に、わが子の幼なき昔。
時間をかけていつまでも選んでいる長男と、ささっと、決める次男の
性格の違いなど、脳裏に浮かびあがらせながら、ひとり笑いなどしてしまった。

この駄菓子の「上川口屋」は、なんと創業が1781年、この内山さんで13代目なんだそうだ。
法明寺の鬼子母神堂は、安産、子育ての神として江戸時代から、人々の
厚い信仰を得ているだけに、境内に駄菓子屋というのはうってつけなのかもしれない。


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駄菓子屋の山内さん


「このあたりに手塚治虫さんが、住んでいたそうですね」
内山さんに訊ねると、
「そう、黒いふちの、丸いメガネの人がよく散歩していました。
あとで、あれが、エライ漫画家さんだと聞いて、驚きましたよ。」
手塚さんの住居跡に行ってみることにした。


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樹齢、700年といわれる大イチョウ

「並木ハウス」というアパートがそれらしい。
参道からなか程の路地を右折したところに並木ハウスがある。
手塚さんは椎名町の「トキワ荘」からそこに引っ越し、
昭和29年から32年まで住んだ。
そのアパートの2階で、「鉄腕アトム」や「火の鳥」など名作が誕生したという。
当時家賃は、5000円だったといわれ、手塚さんは、当時めずらしいT.Vを購入
した折、近所の人々にも、どうぞ観てください、とやさしかったそうだ。

現在アパートに住む女性に、手塚さんの住んだ部屋(201号室)を教えてもらった。
入り組んだ裏道からしかその部屋は、みえなかった。
その部屋に隣接する民家は、かなり古めかしく、木々に覆われている。
手塚さんはこの秘めやか隣家を窓から眺めたのかもしれない。


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並木ハウスの表札

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手塚治虫は、ここで火の鳥などを創作した。

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階段の向こう側、201号室。

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すぐ隣の風景

都電.荒川線の鬼子母神駅に出てみた。
トコトコと、千登世橋をくぐって、電車が坂をのぼってきた。

最後に近くの雑司ヶ谷墓地で、ちょっと気になる墓を訪ねようと思って、
参道にある観光案内所で、場所を調べてもらったが、判らず、きょうは、35度の炎暑に
負けて帰ることにした。
でも、それについて書いておこう。
雑司ヶ谷霊園には、
夏目漱石、永井荷風、竹久夢路、ジョン万次郎など著名人が眠っている。
その夏目漱石だが、生前、小説のなかでこの墓地について触れている。
名作の「こころ」のなかだ。
その作品のなかに登場する先生は、ある事情を抱えて、友人の墓に毎月訪れている。
ある日、先生とわたしは、墓地の付近でバッタり出会った。
ふたりは、墓の間を抜けながら、墓碑銘に注意を向ける。
イサベラなになにだとか、神僕ロギンなどと変わった碑銘を眺めながら、
「安得烈」と彫られたちいさな墓の前で、
わたしは、「なんと読むのでしょう」と、先生に尋ねる。
「アンドレとでも読ませるんでしょうね」と、先生は苦笑する。

これは、
べつにたいした話ではないが、明治時代の小説のなかに描かれた墓の風景が、
いまどうなのかと、ちょっと確認してみたかった、というだけだ。
漱石フアンのボクの興味にすぎない。
たぶん、推測だが、これらの墓石は、付近にある雑司ヶ谷宣教師館に勤務された、
牧師さんたちのお墓かな、と考えている。
日をあらためて、訪れることにしょう。


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都電荒川線、鬼子母神駅。

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夏目漱石の、こころ。

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