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Blue Note , 思い出トランプ、スイングする坂道。南青山。

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  ブルーノート東京。
N.Y.の名門ジャズクラブの姉妹店だ。南青山6丁目。
重い木の扉を開いて、きれいな中年の女性が街路に出て来た。
奥から洩れるかすかな気配。
ジャズのスイングが、ふと耳をかすめたかに思えたが、それは店頭の
ナタリー・コールの笑顔のせいだったのかもしれない。
ナタリーかア。彼女のおやじを思いだすなあ。
ナット・キング・コール。
それに、アーム・ストロングか。ちょっとセピア色だが。
ぼくは、かれらにあんまり溺れはしなかったが、ブルーノートには、ジャズの聖地として、畏敬の念をもっている。

  個人的には、ナベサダが、ジャズへの興味を開いてくれた。
「カリフォルニア・シャワー」である。
いまでも、軽快で躍動的なこの曲に痺れている。

  ボクの好きな俳優のティム・ロビンスが、ミュージシャンとして、ブルーノート東京に登場するらしい。いや、したのかな。
「ショーシャンクの空に」で、フィガロの結婚の曲を刑務所中に大音響で流すティムの
知的で反逆的な横顔を思い出す。
かれと、音楽との因縁に違和感はない。
まして父親が、60年代に活躍したギルバート・ロビンスというミュージシャンだと聞けば、ティムの資質は充分期待出来るだろう。

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ナベサダ、カルフォル二ア・シャワー

  通りをへだてて、岡本太郎記念館にゆく。
なんだ、火曜日は、休館だよオ。
外から庭を覗き込んで、作品の点在するあたりで、晩年の太郎さんを撮影したことを
思い出す。
まだ、太郎さんが、病魔に襲われる前だったが、もう豹のような鋭さはなく、おだやかな人になっていた。
  撮ったフィルムは、3本くらいだったが、100ショットものシャッターが押されるたびに、
かれは足を踏ん張って、その都度、眼を大きく見開いた。
幼児のような素朴な、頑張りに思えた。
「これを崩そう」
シャッターのリズムを変え、言葉もかけてみた。
かれの構えは、崩れない。
太郎さんは、こちらの作画意図を拒否している。
「オレは、こうなのだ」
ということか。
そうボクは悟って、切上げようと思ったが、太郎さんは最後迄、同じ表情とポーズを崩さず、
こちらが撮影の矛を納める迄、協力してくださった。
太郎さん、あの時は、老いたりとはいえ、強い意志を守ろうとするあなたに撃たれた思いがしました。


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岡本太郎記念館

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記念館の庭


  根津美術館の竹林をすぎて、すぐ横にくだる「だらだら坂」にでる。
湾曲している白壁の連なりが美しい。
正しくは、「北坂」。
向田邦子の短編「思い出トランプ」のなかの一編に、「だらだら坂」が登場する。
北坂がモデルらしい。
  物語は、大柄で、鈍重の垢抜けない女「トミ子」が、鼠と渾名された、叩き上げの冴えない社長の囲い者で坂の中程に住んでいる。
男は、週2回、ここに通うが、素朴でつましいこの女を自分好みに育てることに満足している。
だが、トミ子は、隣家に住む洗練された年上女に影響され、マニキュアを始めたり、二重瞼の手術をしたり、少しずつ変貌してゆく。
囲われ女の、男への微妙な背離や、しょぼくれた男の反応が面白い。

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だらだら坂を下る


  晩年、 向田邦子は、この南青山に住んだ。
高級店のひしめく間にも、庶民的な店が息ずいている。
彼女は、魚屋、豆腐屋、花屋など、日常生活を彩どる店みせを利用したそうだ。
骨董通りにある、和菓子屋の「菊屋」で、彼女の好きだった、水羊羹を買う
ことにした。
彼女は、作品の「眠る盃」のなかで、この水羊羹を激賞している。
だが、庶民にはいささか高価だ。
「ウーン。」買い求め、家に帰って、味音痴のボクは、かみさんにいろいろ訊ねた。
「わたしは、和菓子が好きだから、このコクと繊細さは、とても深いと思うけど」
と、彼女は静かに味わっていた。


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和菓子の「菊家」

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菊家の水羊羹

  「菊屋」の近くにある、スイス伝統のチョコの店、「レダラッハ」。
アルプスでしか得られない牛乳、生クリーム、バター、と厳選された素材でつくられた、世界的に有名なミルクチョコだと聞けば、いかに味音痴なボクでも、
ぜひ、という衝動に駆られる。
「トリュフ・プラリーネ」の一粒を、女の子みたいにそっと口にした。
たとえ、ぼくでも特異なこのうまさは、わかる。


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レダラッハ

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レダラッハのミルクチョコレート

  帰りは、楡家通りにでて、絢爛豪華なブランド店に眼を見張りながら、表参道駅に
向う。
ブランド店のなかでも、プラダの威容には、ちょっと驚く。
店舗にカメラを向ける、老若女性が多い。
このあたり個人的には、かって、よちよち歩きの子ども達と、
家族4人で、ヨックモックの中庭のテラスや、アンデルセンの朝食に、通った記憶が懐かしい。
30年も前に通ったこの両店は、いまも健在だ。
途中で、お稲荷さんがあって、衝動的にお参りし、ちょっとした頼み事をした。
帰宅して、このお稲荷さんが、大松稲荷で、向田さんのマンションの隣だったという
ことを知った。

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プラダ

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南青山

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