スポーツ

相撲の花見酒。

1_4


長男夫妻が行く筈だった相撲の入場券が、「いけなくなった」と送られてきた。
仕事が忙しく行けないというわけだ。
可哀想だが、仕事優先だよ、というわけでぼく達夫婦で、
喜んでいってきた。
ぼくにとっては、3回目の両国国技館だ。
一回目は、亡き父と砂かぶりの枡席で。
二回目は、ぼくの銀行員時代、親友の風間と、なぜか、美智子皇后のお兄さんの正田さんと三人で。


2

正田さんは、静かな方だ。
そして、今回は妻と。
だから、力士や土俵の印象より、同席した相手に、いろいろな思いがある。
この日、妻とは、門前仲町の喫茶店のトーアで待ちあわせた。
時間がすこしあったので、近くの富岡八幡宮の境内にある
大相撲の記念碑のあたりで、ひとりで涼んでいた。
ここは、大相撲にとって由緒のある場所だ。
このあたりは、上品な下町(へんな言い方?)で、
特に八幡様や、お不動さんには、いつ来ても気持ちが安らぐ。

3


4

しばらくぶりの両国は、すっかり変わっていた。
江戸川乱歩の小説に登場するような、コンクリートに丸窓の、不気味な病院も消えてない。
西口の薄暗い改札口に、力士の肖像画だけが、ポツンとあった。
そんな不思議な空間も、もうない。
やたら、奇麗になっちゃって、面白くないぞオ。
途中で、虚無僧みたいな、乞食みたいなおじさんが、しゃがんでなんか食っているのに出会い、
「やっぱり両国は、これだよな」
と、ひとり悦にいった。

5

館前は、すごい人出だ。
外人さんの多いこと、多いこと。
館内はやたら、奇麗でモダンになっちゃった。
はとバスのガイドみたいな、案内嬢に、「向15って席、どこ」ってたずねたら、
しずしずとゆっくり、そこの29へ案内してくれた。
もの腰がしとやかで、びっくり。
一番うしろの枡席で、ふたり席だった。
足は、伸ばしっぱなしで、まだおまけがでる。
楽だ。
「へえ。こんな席、出来たんだ。」
ひとり、感心することしきり。


6

遠くから眺める相撲は、なかなかコミカルだ。
T.Vのフレームと、ちがって、なん千人の観客のかこんだ、ちいさな楕円の土俵、
人がちょこまか動いている様子が、ガリバーの小人国みたいで面白い。
紙相撲的、というか、子供時代に遊んだおもちゃの感覚。
T.Vと決定的にちがうのは、そこだ。
T.Vでは、力士の表情や、微妙な掛け引き、それに技、などをじっくり味わえる。
そんな、凝った相撲文化は、枡席のケツのほうにはない。
後ろの方で、でけえ声で、「高見さくらア」などと叫んでいるので振り返ったら、
おっさんが、ぐでんぐでんに酔っている。
高見盛じゃないの?隣席のねえちゃんが、またぁ、コマカイことをいう。
通路は、やきとりくわえたり、缶ビールもって、大勢うろうろしている。
枡席だって、出たり、入ったり、「おーい。め—ねーぞ」声がかかる。
分かったア。
これは、花見とおんなじだ。結局、遠くで相撲を眺めながら、
喰ったり飲んだりして、館内の、この雰囲気を、楽しむんだ。
「酒が飲める、酒が飲める、酒が、のめるぞオ」って感覚だ。
これだよ。日本文化は。
ここで相撲を見ているかぎりでは、頭ンなか、蒸気が沸騰して、
「横綱の品格とは」てなお上品な思考にはならない。
この猥雑な味。たまんねえな。
という、人々で一杯でした。

7

| | コメント (0) | トラックバック (0)